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コインロッカーの心臓

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好きな場所

夏の陽射しが燦々と照っている夏の日、小学校に上がった私は自らの意志で遊びに出ることが多くなった。夏休みに入って間もない頃、学校のプールから急いで帰宅するとプールバッグを玄関に放り投げた。「公園行ってくる!」と大声を出し、その勢いで湿っぽく蝉の鳴く道路を駆け抜けた。私は真っ先に滑り台へ向かう。まだ誰もいない。思わず口元がゆるむ。

夏休みに宿題が出ていた。「自分の好きなものを書きなさい」という宿題だ。私はそれをふと思い出し、笑顔になった。眼前にすべり口を迎えると、頂上まで一気に駆け上がる。私は階段が嫌いだった。角度をつけた場所を駆けるのが好きで、一段一段足を段に合わせるのは意気をせき止める感じでどうもだめだったのだ。頂上につくと勢いよく駆け下りた。下りた。しかし滑り台は終わらなかった。私は全速力で足を動かした。動かしたのではなく、動いてしまったのだ。周囲は乾き切らない内に風に吹かれた水彩画のようににじんでいく。若干の恐怖心に苛まれながらもその加速とそれからくる爽快感に得も言われぬ快楽を感じていた。

滑り台は私の興奮と共に止むこと無かった。しかし脳裏を過ぎる母の顔ではっと我に帰った。眉間にしわを寄せ口をへにするその顔を思い出すと一時的に沈鬱の念に覆われた。蝉の飛び立つ音が耳をつく。コンクリートの上で私の黒が嫌に映えていた。
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