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コインロッカーの心臓

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反動形成

私は妹が好きです。妹も私を好きだと言い、私はそれをにこやかに聞いてうんうんと頷きます。日ごろの生活からしても、それは実に正当だと思います。たとえば、妹は私にお菓子をくれたり、遊びに誘ってくれたりします。そんな妹を見ていると、私は自然に笑みがこぼれます。頭をなでなでしたり、妹の欲しいものをあげたい、と思うのです。

私は妹が嫌いです。妹も私を嫌いだと言い、私はそれを無愛想に聞いてあっかんべーをします。いつも、こうです。だから私は妹が嫌だと思うことをします。たとえば、寝起き時の不機嫌な妹の背中をつついたり、連絡帳に落描きをしたりします。妹は悲しみを溜めてから一気に泣き出します。なんでこんな事をするんだ、やめてくれと言わんばかりのその泣き顔や泣き声を感じると、私はなぜだか楽しくなり、たまらなく追い討ちをかけたくなります。

私を楽しくさせる妹の悲しみによって、私は妹が好きだと感じるのです。
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レンガ

公園で、とても綺麗な花を見つけた。マリーゴールドという名札がつけられていて、その周辺はすっと鼻を通るような、優しく、心持ち酸味の利いた甘い香りで満たされている。その香りはあまりに清らかで、まさにマリーゴールドという名に相応しい。その花が美しく風景と慣れ親しむような輪郭を描くため、風景のすべてが整って見えた。

私は病気だった。医者には行っていないから原因はわからない。時々息苦しくなり、身体の中で何かが起こっているような症状が出る。考えるとそれは眼前にある風景に私が存在していると思い浮かべるときに出るようだった。

今もなんとなくそれを感じている。顔が熱を帯び、さらには心臓の音が全身の血管へ均等に打っているようだ。無意識に手は花の首下へ持っていかれ、私はゆっくりと美しい空気を吸い上げた。瞼には妙な重みを増し、やわらかい風が髪を揺らす。マリーゴールドは息苦しそうにこちらを見上げていた。何枚も重なった花弁。私は根元をぐっと掴み地からマリーゴールドをちぎり取ると、レンガの上に落として手近の石でぐりぐりと馴染ませた。
鮮やかなオレンジが葉とぶつかり湿り気を持ちながらへばりつく。石の間で鳴く声は細く愛らしい。きつく、酸味が強い匂いが青臭さと混じって漂う。繊細な葉脈は、花弁の繊維と複雑な模様を描き始めた。レンガの上でマリーゴールドは、次第に乾いた茶色へと変わり、染み付いていった。

私は医者に行った。そこには、真っ白い格好をした医師が堂々と座っていた。四角い部屋は薬品の匂いにまみれていて、私は息苦しかった。
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