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コインロッカーの心臓

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嬉しいので

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図版で述べられている「外」がどうなっているかイメージを絵と文章で表現しなさい
☆☆
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私は病気だ。病名は未だ分からない。医者に行っていないからだ。それも病気にかかったのがつい先程なのである。朝、目を覚ますと体中が膨張していた。窮屈で耐え難い圧迫感に襲われたのである。本当に体が膨張していたのだろうか、否、もしくは布団が雨から水分を得て重量を増し、私の体を覆ったのだろうか。私の体はしかも、無数の穴が開いていた。皮膚はなくなり、ぽっかりと大小豊かな穴が開いていた。神経がすっと風を受け、私はそれを異常な程敏感に感じる。穴のフチを空気が丁寧になぞっているのを、私はただ受けるしかできなかった。抵抗ができない。つん、と何か触れた感覚がし、していないはずの少し甲高い声のような音のようなものがずっと、じっと、ゆっくりとわずかに厚みをもった肉をたどる。その根底にはなめくじが通ったあとの粘着質と似たようなものがじとっと残されているらしかったが、私はそれを自らの手で拭うことすらできなかった。一体この穴はどう扱っていいものかと考えをめぐらせた結果である。結果というのも、もうわけがわからないということしかでてこないのだ。私はもしや穴、が膨張しているのではという見解に至った。私はこ
の穴はいつどうやってできたのかを考察することにした。例えば、昨日何をしたとかを思い出す。睡眠。昨日の昨日何をしたとかを思い出す。睡眠。睡眠、ただそれだけが頭にある。つまり私は睡眠によってか、又睡眠の内にどうにかなってしまったことがわかった。睡眠、息をして、目をつむって、意識を脳の奥へ飛ばしずっとずっと奥の細胞や脳の一部しか機能しない。私はしっかりとした“人間”となる。“人形”ではない。つまり、私は内臓になるのだ。内臓が私の意識をも、全てのみこむ。その時、人、という意識をもつ動物との間になる。私はイコール内臓だ。睡眠をやめると、人になる。しかし、外臓にはならない。もしかしたら外臓もあるのかもしれないけれど私はそれを見たことがない。和訳された解体新書(ターヘルアナトミア)にもさっぱり出ていなかった。でていたとしても、私の目を止めなかった程微々たるものだったのだ。そこで私は病気のことを考え直した。病気は私の「体中が膨張してい」るという思考のもと発見をよぎなくされた。私の皮膚は確かに膨張した。膨張によってぐいと引っ張られ、もしかしたらその反動で穴が開いたのかもしれない。開いた
、というのは本当だろうか。私はそもそもその穴の存在を認識していなかっただけではないだろうか。あまりに自然に開いていて、私がそれをあたり前だと全く気にしていなかったのかも知れない。目をじっと閉じてみた。私は閉じる、という三文字になぜか違和感を覚えた。閉じるものはなんだろう、と考えなくとも今の私には穴という思考しか起こらなかった。私に開いていたものは実際に穴だった。それは耳孔眼孔鼻孔やら肛門まで、また毛穴であったのだ。私は私に外臓を感じ、それが今の私に力強く内在していることを感じた。私はふっと全身の力を抜いてから再び開けた眼をゆっくりと閉じ、睡眠、を続けた。
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