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コインロッカーの心臓

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糸でんわの途中で

スーっと、耳の中で落ち着いた音が流れる。
耳に当てた紙コップは、私の温度を奪いつつも、まだひんやりとした感触を持つ。
今、耳に入り血管を伝ってくるこの音は、彼女の脈動だろうか、
だとしたら、お互いに耳を当てているのか、おかしなでんわだ。
おそらく、長く続くこの脈動を彼女も感じ、脈を絶ちきれずにいて、
廊下を抜ける空気は、ゆっくりと輪郭を、もしくは糸をなぞっている。
コップはぴんと引っ張られ、微妙なバランスを保つ、体の一部のように。
小さい頃もこんな感覚になっただろうか。私は糸の先を見た。
白く光る糸が、薄暗く、灰色を流したような校舎によく映え、ゆったりと直線を描く。
紙コップは、その先で、小さく廊下を向いて座っていた。
廊下には、ずっと、私の脈動が響いている。
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