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コインロッカーの心臓

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死んじゃいそう

メリーが死んでしまいました。
6日に試験を終えて帰ったら、ソファの上でぐでんとしていて。
夕飯を食べ終わったころにそのまま血を吐いて目をまん丸くしてどこかを見ていました。
名前を呼んでも、目を合わせようとしても、必死に爪を立ててソファを掴んでいて、
よだれをだらだらとたらして時たま苦しそうにわおんわおんとあくびをするように泣いていました。
鼻をしきりにひくひくさせて、顔全体を痙攣させて、長い間苦しそうにしている身体を、ずっとさすっていました。
通っていた病院はもう閉まっていたので、明日お父さんに連れてってもらうからね、とママは喉に何かが詰まっているような声で話しかけていました。
メリーは身体をゆっくり持ち上げて歩こうとしました。
足をひた、ひた、とつけて歩こうとしました。
でも大きな身体に耐え切れず、そのまま床に倒れてしまいました。
もう力がほとんどないようでした。
あまり動かさないように、でもどこかへ行きたいのかもしれないと、私はメリーの身体を支えてあげながら、
メリーは自分の部屋に向かっていきました。
冷たくなったフローリングに力なく伏せると、メリーはおしっこをしていました。
こんなに苦しいのに、トイレに行こうとして、メリーはもっと苦しそうでした。
そのまま自分の部屋に入ろうとして、そのままどこかの隙間に入り込んでいこうとして。
私と母は、ずっとメリーを見ていました。
いつもはなんともないメリーの鼓動が、どくどくと部屋に響いていました。
それはどんどん速くなっているみたいで、私はすごく焦りました。
速く脈打つ心臓は、フローリングにつたっているようでした。
メリーの鼻はもうサラサラとしていて、私は指をなめて鼻をしめらせてあげました。
それでもすぐに鼻はさらさらとして、私はどうしようもなくて、悲しくて、どうしたらいいかわからなくて、
何度も指をなめて鼻をしめらせました。
速くなっていた心臓は徐々に速度を弱めているようでした。
メリーはどんどんしぼんでいくみたいで、いつもは大きく感じるお腹はぺっちゃんこでした。
私は母に動物病院を探そう、と言いました。
どうしても耐えきれませんでした。
私はすぐインターネットで検索しました。
やはり近所にはなかったけれど、どうしても連れて行きたくて、どうしたらいいかわからなくて、
カバンの中にバスタオルとメリーをいれて、母がそのメリーを大事に抱えて、タクシーを拾いに行きました。
妹に留守を頼んで、私と母は急いで環状七号線まで行きました。
タクシーはすぐ来て、動物病院の住所メモを渡しました。
いつもは星が儚く、ビルの点々とした電灯はギラギラと輝いて見えるのに、
無数の電灯は一つ一つが短命で、遥か遠い星は果てしなく見えました。
工事中の看板は、私と母とメリーに手を振っているようでした。
私はそれが全部嫌でした。
運転手も嫌でした。
メリーはタクシーの中で何度も叫びました。
何度も何度も、そのたびに母はメリーに大丈夫だよ、と言っていました。
母はメリーの顔を何度ものぞいていました。
メリーは重い、と言っていました。
メリーの声は、しなくなりました。
それと反対に、母はメリーのことを何度も呼びました。
メリーは母の腕の中でぐでんと折れ曲がりました。
そして、母は家に帰ろうといいました。
帰りの道は道路わきの電灯が見送ってくれました。
家に帰ると妹が玄関で待っていました。
なんで泣いてるの?と泣いていました。
メリーはソファーの上で寝ました。
その横で母も寝ました。
メリーの寝顔はすごく苦しそうでした。
私はそれが嫌だったので見ないようにしました。
でもおやすみ、と言ってから服を着たままベッドに入りました。
足もとが重かったので、またメリーがベッドにもぐりこんだのかと思いました。
ベッドの階段がギシというと、すぐに目が開きました。
いつ寝たのか、いつ起きたのかわからなくて、必死に携帯をいじっていました。
でも結局何もできませんでした。
どうしたらいいかわかりませんでした。
どうしたらいいかわからなくて、とにかく寝ようとしました。
妹がすすりなく声がずっと聞こえていた気がします。
私は目がずっと重かったです。

次の日朝起きたら、メリーは相変わらずベッドで寝ていました。
妹はメリーの横で座っていました。
私もメリーの横に行って、おはようと大きく声をかけました。

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